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考えてみれば、大変厳しい状況です。

向こうの勘違いというか、過剰警備というか、当然の警備というか。奥歯にものの挟まった言い方をしていたのは、これは北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を訪問した航海のときの話です。日本の政治家の大変リベラルな、宇都宮徳馬さんという方のご紹介で、向こうの国の一番偉い方、主席というのでしょうか、その方のインビテーション、招待状を持って航海していたのです。軍隊にはその通知がいっていなかったらしく、国を守る責任がありますから、われわれを捕らえたわけです。

朝の白白空けの4時ごろそういう事件があって、官庁が開く9時まで向こうに向かって曳航されました。9時になると、この招待状が本当かどうかの確認ができたのでしょう。本物だということがわかって解放されました。これは国際的な勘違いですが、向こうにとってみれば、われわれを侵入者、海賊のように理解してとらえたのです。

そういう経験をしてくると、船というのは海の上に孤立しているものであり、私が川の上で棒か何かを持って海賊行為の夜番をしたのは、イラン国内で日本の国民としての権利を守るために行動したのです。警察権を持っているわけではありませんから、そこで泥棒をぶったたいてしまったら、傷害罪になるのか何になるのかよくわかりませんが、いずれにしても、自分の財産を自分で守らなければならないという立場に、船の上・海の上ではなるのです。

あるいは、ヨットでよその国を訪問したときは、相手にとってみれば、「お前は何者であるかわからない」ということになるでしょう。またこちらにとってみれば、6人か8人しか乗っていない小さな集団ですが、日本国民としての、訪問者としての権利、あるいはその船の上での国際的な権利があるのです。

国交がないですからパスポートが通用しませんが、1枚の紙で自分たちの立場を証明しなければならない。つまりよその国を訪問する、あるいは海の上に一つの船があるということは、そこに国から離れた自分たちの一つの社会があり、あらゆる外界との間に緊張関係が持たれるのです。

海賊行為、あるいは海賊の被害の基本は、船の上で保たれなければならない権利が侵害されるというところにあるのかもしれないと考えるのです。

海賊の歴史は3000年と言われていますが、私の今日の話は、できるだけ個人的な海賊のプロフィールということに焦点を合わせたいと思います。

私が以前、『海賊列伝』という本を書きましたが、そのときに使った海賊の本、参考書は80冊になります。そのくらいたくさん、海賊というものがいままで世界で研究されたり紹介されたり、物語になったりして出版されています。

 

 

 

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