日本財団 図書館


(2) GPS (Global Postioning System)

船舶や航空機が、陸上の発信局からの電波で自分のいる位置を求める電波航法は、第2次世界大戦中に開発され、戦後急速に普及しました。ロランA、デッカ、ロランC、オメガなどの双曲線(そうきょくせん)航法が代表的なものです。双曲線とは、2つの定点からの距離差が一定な軌跡(きせき)のことをいいます。この距離の差をAとBの2つの発信局からの電波の到達時間差(又は位相差)に置き換え、海図上に双曲線を描けば、自船がこの双曲線上のどこかに位置することがわかります。さらにA局ともう一つC局との間で双曲線を描けば、2つの双曲線の交差する位置に自船がいることがわかります。ところが、1990年代に今までとは全く違う観点の新しい技術が登場しました。米国が開発したGPSがそれです。高度約2万キロメートルの周回軌道に24個の衛星を打ち上げ、地上の1地点で常時6個ないし10個の衛星の電波が受信できるようにした宇宙の電波灯台です。軌道が6面でそれぞれに3個の衛星が通行しています。衛星からの電波の到達時間から現在位置を求める方式で、電波には衛星の正確な位置情報も含まれます。船は海面上を航行し地球表面上の2次元とみなすので3つの衛星を使い、4つの衛星を使えば航空機などに必要な3次元の測定も可能で、誤差は民間向けサービスで数10メートルと驚異的です。精度を保つための衛星側の発信のタイミングは誤差30万年に1秒のセシウム原子時計(セシウムの電磁波で1秒をはかる)で厳密に周期が決められています。24個の衛星が歌う電波の歌はまさに一瞬の狂いもない正確なコーラスとなって地上に降り注いでいるのです。GPS受信装置も最近は低価格化が進み、船舶や航空機だけでなく、自動車用ナビゲーションシステムとしても普及しています。また、最近では歩行者用のGPSマップがあり、修学旅行のグループ行動等にも活躍しています。

 

070-1.gif

 

2. 海図(かいず)

旅行や登山に地図が必要なように、船舶による航海には海図:チャートが必要です。古代の小さな船であれば座礁の危険も少なく、また岸に沿って航行できたのですが、船の大型化と遠洋への航海の時代になると、海図が必要となりました。海図には水深、底質(ていしつ)、海流と潮流(ちょうりゅう)、浅瀬(あさせ)や暗礁(あんしょう)、航路標識や灯台の位置などが記されており航海に欠かすことができないものです。船の位置や周りの情報などを書き込むため陸上の地図のようにカラフルな印刷にはなっていません。国防のみならず海運のためにも、自ら海図を刊行することが不可欠であることを確信した明治政府は、明治4年(1871)に兵部省(ひょうぶしょう)海軍部を創設した際、水路局を設置しました。創設時の水路部長である柳楢悦(やなぎならよし)少佐を筆頭(ひっとう)に数名の職員が、外国人の助けを借りず独自の力で、明治5年(1872)に日本第一号の海図を刊行しました。現在も海図や、海図と同じように航海には欠かせない天測暦や潮汐(ちょうせき)表、灯台表などは、海上保安庁水路部で刊行されています。また近年航行援助装置がコンピュータ化されるのに伴い、海図もCD-ROMに収められ電子海図と呼ばれるものが刊行されています。カーナビゲーションの船版で、従来の海図の情報に加えて、コースとスピード、危険域に近づいた場合の警報等の航海安全に必要な情報をディスプレイに表示することができます。更に、次に必要な海図の自動ロードや周りの明るさに合わせた画面の表示の調整、拡大・縮小、レーダー画像との重ね合わせなどもできる優れ物です。電子海図を使用するには電子海図表示システム(Electronic Chart Display and Informaiton System:ECDIS)を用います。

 

070-2.gif

資料提供:海上保安庁水路部

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION