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鎌倉時代(かまくらじだい)の大型海船(おおがたうみぶね)
鎌倉時代になると荘園(しょうえん)の年貢(ねんぐ)輸送にくわえて商品の輸送量も増加してゆきます。しかし、当時はまだまだ大型船を必要としなかったらしく、依然として準構造船を使っていたことが同時代の絵巻物にうかがえます。準構造船とは、丸太を刳(く)り抜(ぬ)いた刳船部材(くりぶねぶざい)を前後に継(つ)いだ船底部に舷側(げんそく)板を取りつけた船のことです。大きくとも200石積(30トン)程度の船で十分であれば、森林資源の豊富な当時としては、建造しやすく耐久性にも優れた準構造船が好まれたのでしょう。
刳船部材の構成は船首−胴−船尾の三材が普通です。半円筒状の胴部材は、屋根瓦(やねがわら)を思わせるところから、船瓦(ふながわら)もしくは瓦(かわら)と呼ばれました。
この船底部に1〜2段の舷側板をつけて、補強のため上部に多数の船梁(ふなばり)を横に入れます。外に突き出した船梁の上には角材を渡し、セガイと称する張出部を作って板を置いて櫓(ろ)をこぐ場所としました。荷物を積むのは船の前部で、後部には人の乗る屋形(やかた)を設けています。帆柱は1本で、起倒(きとう)式になっているので碇泊(ていはく)時や無風あるいは風が悪いため櫓走する時には倒します。この帆柱には上下に帆桁(ほげた)のある1枚の四角帆を張ります。帆の材質は莚(むしろ)で、商船に木綿(もめん)等の布の帆が普及するのは17世紀中期のことです。
船の方向は船尾に吊り下げた舵で制御しますが、舵は和船の伝統で吊り下げ式になっています。また、碇(いかり)は鍵(かぎ)状の木に偏平(へんぺい)な石を取りつけた木の碇を使っています。
多数の船梁で補強された舷側板、積荷を船体前部に置く方式と船尾の屋形、櫓をこぐためのセガイ、外して倒すことのできる帆柱、四角の帆、吊下げ式の舵などの特徴は日本の船の伝統的な形式として後々まで受け継がれることになります。