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徳川時代の日本は孤立していたどころか、世界経済の中で大きな役割を果たしていました。十六世紀から十八世紀までは銀の輸出、そしてさらに銅の輸出が行われ、新世界の金属輸出に次いでこの三世紀間の世界経済のテイクオフ(離陸)に大きな刺激を与えました。国内では経済成長だけでなく、新しい方向に向かって芸術、教育、文化の面で急速な発展が起こりました。しかしユニークなのは徳川時代だけではありません。戦国時代は政治面でも軍事面でも混沌とした状態が続きましたが、この時代には急速な経済成長と文化の開花が起こっています。時代をずっとさかのぼれば、日本は常に成長と変化をし続けている王朝社会のように見えます。聖徳太子(五七四-六二二)は、日本史のシーンに現れる最初の傑物の一人ですが、この聖徳太子は偉大な改革者であり、また政治、経済、宗教面の大変革の擁護者でもありました。「近代化」が始まる以前の過去の時代においては、日本は時を超越した永久の「文化的本質」をもち、変わらない国と考えられていました。しかし、これは日本社会の真実の姿を覆い隠すフィクションです。より厳密に言うならば、日本は少なくとも十七世紀から「近代化」の道を歩み続けているのです。

 

 

 

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