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土地、労働力、資本はすべて譲渡可能なものであり、これは資本主義の制度上の必須条件でした。特に土地の売却が可能になったことから、農民の間で小作が広く行われるようになりました。地主は小作人たちに対していくつかの「伝統的な」義務を課し、しばしば彼らの権利を侵害していましたが、地主と小作人の間の関係は「新封建主義的な」ものではなく資本主義的なものでした。

急激な経済発展と農村部での市場経済の成長の結果、数十万人もの農民、特に農家の次男以下の息子たちが成長を続ける都市に流れ込みました。私は明治時代や大正時代のことを述べているのではなく、徳川時代の中期のことを言っているのです。石田梅岩は、財産をつくるために都市に移住した、こうした多くの農家出身の少年の中の一人にすぎません。人里離れた地域は別として、当時は農村部であっても「自然経済」が長い間過去のものとなっており、人々は日用品などは市場(いちば)で購入することができましたが、やはり都市は進んだ消費生活の中心地であり、そこにはすべてのものがそろっていました。

 

 

 

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