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石田梅岩の学問の背景には神道があり仏教があり、さらに儒教と道教がありましたが、その中心は心の学問でした。心の学問といえば観念論と思われやすいのですが、梅岩の心の学問は、たんなる観念論ではありません。知るもの(自己)と知られるもの(事物・道理)、その両者の心をひとつにすることが「真に心を知ること」であり、「発明して(心を知って)」自由に動く心を体得することを説いた梅岩の学問は、実践的な倫理であり生活の哲学でした。

とりわけ商人の道のありようを力説して、商人をさげすむ風潮に敢然とあらがったのは、梅岩の学問と思想をよりきわだったものにしています。「売利を得るは商人の道なり」と断言し、「富の主(あるじ)は天下の人々なり」と明言した梅岩は、「我が教ゆる所は商人に道あることを教ゆるなり」とも述べています。討論のなかでも指摘しましたが、たとえば江戸の碩学(せきがく)荻生徂徠が『政談』のなかで、「武家と百姓とは田地より外(ほか)の渡世は無て常住(じょうじゅう)の者なれば、只武家と百姓の常住に宜しき様にするを治の根本とすべし。

 

 

 

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