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しかも、自分以外のところに無駄があっても、関心を寄せません。「倹約」は、世の中のため、世界のために行うものです。三つ使っていたものを二つで済ませ、余った一つを世の中のため、世界のために使うというのが梅岩の教えです。

私は、これからの日本人が取り組まなければならないポイントの一つは、倹約であると考えています。現在、地球規模で環境問題が深刻化しているなか、CO2の削減一つを取ってみても、倹約なしには考えることができません。日本人が、忘れていた倹約の精神を取り戻せるかどうかが、環境問題の解決の大きな鍵を握っているでしょう。

十五年ほど前に、ある外国人の方に言われた忘れられない言葉があります。

「日本はたしかに素晴らしい経済成長を成し遂げた褒められるべき国である。しかし、決して尊敬される国ではない」

もし、日本がこのままあくなき経済成長を目指し続けるようなら、世界はますます日本を尊敬しなくなるでしょう。しかも経済成長がこれまで通り見込めなくなった今、「褒められる国」ですらなくなるかもしれません。

ベラー博士は、経済大国としての日本ではなく、宗教・思想といったもの、特に江戸時代のそれに足を踏み入れ、日本を高く評価してくださっています。

 

 

 

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