また、シンポジウムの場でも触れましたが、ユナイテッド・テクノロジーという会社が、一言も自社の広告をしないで新聞に意見広告を載せていました。ちょうどアメリカが、いわゆる「双子の赤字」に苦しんでいる一九八六年から八七年頃のことです。「今、アメリカは苦しんでいるが、こういう苦しいときにこそ人としての正しい道を歩まねばならない」というメッセージがこめられていました。日本ではこのような広告にお目にかかったことがありません。アメリカ人の心の広さに胸を打たれました。
さらに、最近アメリカのレストランで食事をすると、食べきれなかった分を箱に入れて持ち帰れるようにしてくれます。昔の日本ではよくある光景でしたが、今は食べ散らかして帰ります。祖父から聞いた話ですが、アメリカのある大統領が当時の日本の食生活について、感心して次のように言ったそうです。「アメリカの食事は最初から個々人のお皿に取り分けて出すから、残したら捨てなければならない。日本の場合、大鉢や大皿から自分が必要な分だけ取って食べるから無駄が出ない」。今は、「もったいない」と思う心も、日本とアメリカで逆になってしまったようです。