アメリカの心
倫理の崩壊は、決して我が国だけの問題ではなく、諸外国でも類似の問題を抱えています。アメリカにおいても、日本以上に深刻な問題が数多くあるでしょう。しかし、最近は、日本よりもむしろアメリカのほうに、人として正しい道を歩む姿が見受けられるように思います。
昔から、アメリカは個人主義の国であり、数字を尺度とした合理的思考に基づいて行動する国であると、まことしやかに言われてきました。ところが、実際はそうでないケースもまま見受けられるのだということを、私はいくつか経験しているのです。
例えば、最近、ある印刷に関する巨大プロジェクトを受注するにあたって、当社がアメリカの印刷機械メーカーとともに進めようとしたときのことです。残念なことに、日本のある企業から目に余る妨害行為があったのですが、そのアメリカのメーカーは、われわれの話を聞き、われわれの真意を理解してくれました。アメリカから見れば、上場もしていない当社は、どんな会社かわからない小さな存在だったでしょうが、彼らは決して無機的な数字だけでは判断しませんでした。彼らこそ、梅岩の教える「人の道」をわきまえていると思った次第です。