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もちろん日本にも、富を社会へ還元されている企業家がいらっしゃいますが、その数はまだ非常に少ないと言えます。私は、日本の企業家もそうした社会貢献を通じて世の中を啓発していくべきだと考えます。企業経営者のそうした行為が、上場など経営者としての成功と同じように受け止められ、人々に称讃される世の中であってほしい。そうすれば経営者自身にも、企業経営を通じて社会に貢献しているという自負が生まれてくると思います。

現代の日本は、少子・高齢化が恐ろしいスピードで進み、六十五歳以上の高齢者が二〇二五年には四人に一人、二〇四〇年頃には三人に一人になり、人口は一億人を切るだろうと言われています。そうなれば、現在の経済規模は当然縮小せざるをえなくなります。ただし、経済のパイは小さくなっても、一人当たりのGDPは世界でもトップクラスを保つことでしょう。そういう国に日本がなったとき、日本が世界に対して果たす役割は何かと言えば、決してこれまでのような経済大国としてのそれではありません。

日本においても、昔は素封家と呼ばれる人たちがいて、例えば成績がよくても家が貧しくて学校に行けない子どもを学校に行かせてあげるとか、何かもめ事が起こった場合、仲裁に入ってものの道理を教えてくれたと言います。社会に、ある種自己犠牲的な精神をもって貢献しようという人々がいたのです。

 

 

 

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