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それらの国々が今後消費するエネルギーや資源は、膨大な量になるでしょう。そのことを考慮すれば、先進国は、自らのエネルギー消費量を抑える、つまり、生活レベルを下げるという犠牲を払うことを覚悟しなければなりません。

そのとき、鍵になる言葉が「足るを知る」ではないでしょうか。「足るを知る」というと、我慢するとか節制することと捉えられがちですが、そういう単純な意味ではありません。経済成長至上主義というのは、いわば「足るを知らない」ことに端を発しています。人間の欲望を喚起し、刺激し、それを満たすというプロセスで成長を続けていこうとするのですが、欲望というものには際限がありませんから、いつまで経っても満たされない。常に不足感があり、心が安定しない。つまり、欲望を満たし続けるというプロセスは、決して人の幸福に結びつくものではないのです。今は、そのように常に焦りやいらだちを抱えた不安定な心の持ち主が増え、社会に暗い影を落としています。また、地球上の資源は有限ですから、際限のない欲望に応えていくことは物理的に不可能になってきています。このように、心という内面的な側面からも、環境という外面的な側面からも、「足るを知らない」思想は、完全に行き詰まっているのです。

 

 

 

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