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欲望のあくなき追求が自分の幸福に結びつかないのだということを冷静に考えれば、私たちはおのずと「足るを知る」ようになってくるはずです。私たちが真の意味での幸せを望むならば、当然必要になる考え方だからです。「足るを知る」とは、先ほども言いましたように、己の欲望を抑圧して我慢するという意味ではなく、今あるものに対して感謝の心をもつことです。今ここにこうしてあることをありがたいと思い、それに感謝できることは、心が豊かで充実しているという証(あかし)です。欲望から感謝へ―そのような心の転換が、今、世の中に必要なのではないでしょうか。

 

今こそ倫理・道徳の重要性を再認識するとき

もともと私たちの祖先は、「足るを知る」ことを知っていました。いや、知らなければ生き延びることはできなかったでしょう。狩猟・採集時代の人々は、大自然から食物となる海の幸、山の幸を受け取って生活していました。今のように自然への過剰な介入は行わず、自然の再生産が可能な範囲で、自分に必要なものだけを採るという知恵をもっていました。

 

 

 

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