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特別な宗教などとは関係なく、天と人間とを敬い求める西郷隆盛の普遍的な愛の宣言に、稲盛氏は特に惹かれたのかもしれません。

新しい会社をつくるにあたり、稲盛氏はそれまで自分が勤めていた会社に存在した官僚的な縦割りの組織を採用しませんでした。その代わりに必要に応じて組織を即席でつくる方法を採り、常に従業員を責任ある“協働者”と見なし、そのように彼らと接したのです。これは後に稲盛氏が“アメーバ・システム”と呼ぶ組織へと発展していきました。

 

京セラが成長を続け組織が拡大する中で、私は大きな組織を小さな組織(細胞)に分割して、無駄のない経営をしなければならないと思った。…このような観点から私が考え出した経営手法がアメーバ経営である。一つひとつの組織が、環境に応じて姿を変え、自己増殖することから、アメーバと呼ぶ。アメーバは社内間で互いに売買をし、あたかも一つの中小企業であるかのように活動する。…末端の社員一人一人までが自分のアメーバの経営目標を把握し、それぞれの立場で業績向上に努力を払うというような、全員参加の経営を実現する。アメーバ経営は、これらのことを目的としている。

(『敬天愛人』より)

 

 

 

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