この研究結果をまとめた本は二〇〇一年の終わり頃に出版される予定で、そこには日本も含まれているそうです。日本に関する研究結果について教えてほしいと彼に頼んだところ、日本の場合、アメリカと比較できるデータがあまり見つからなかったと言われました。しかしそこにあるだけのデータから察すると、まだ進行具合は遅いものの、日本もアメリカと同じような傾向にあるとのことです。実にすべての先進国の社会が、社会資本の減少という、同じ方向に向かって進んでいます。そしてその中ではアメリカが最もひどい状態にあるわけです。日本の社会資本がまだアメリカほどには失われていないことには多少の安堵感を覚えますが、社会の進む方向が同じであれば、決して安心できるものではありません。
“絆”としての社会資本の問題点
またパットナムが論じていることの中に―ある意味では『心の習慣』も―検討すべき別の問題があるのですが、それは社会資本が必ずしも善ではないということであり、時としてネガティブな影響を生み出すこともあるということです。