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パットナムは社会資本には二つの種類があることを指摘していますが、一つは“絆”としての社会資本で、もう一つは“橋渡し”としてのものです。絆としての社会資本はグループ内での結束力であり、橋渡しとしてのそれはグループ間のつながりを強める力で、自分たちが社会の一員であることを感じさせる意識でもあります。絆としての社会資本は、社会全体が発展していくうえで問題を引き起こす可能性があります。つまり、一つのグループ内での非常に強い結束は、時として社会破壊活動につながる場合があります。極右翼や極左翼の政治団体などはその例でしょう。残念ながら宗教団体でも、グループ内での激しいほどのメンバー同士の結びつきにより、自分たち以外の人々に憎しみを向ける人たちがいます。そのような団体はアメリカにも日本にもあります。オウム真理教のような例ですね。『心の習慣』の中でわれわれは、近隣住民のグループにおける強い結びつきの意義について論じました。しかし一九九六年の新しい版では、単一民族や同じ社会階級で構成される近隣住民グループの間で強い結束が生まれると、自分たちとは異なるグループに排他的になり、社会を一つにまとめるどころかバラバラにしてしまうことを指摘しました。

 

 

 

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