上田 大変に適切なご指摘をしていただきました。私は先ほど、ベラー先生が五十年前にお書きになった名著『徳川時代の宗教』について、ご自分の近代化理論の弱点を自己批判されたことに大変感銘を受けたというご挨拶を申しました。あとで休憩時間に先生の奥様から、「あの時代はあのように言うのが当然でした」というお話がございました。それはもっともなことだと思います。ベラー先生がマックス・ウェーバーの考えをさらに深め、心学を重視して、具体的に論証されたその業績は大変ユニークで、その後の研究に大きな影響を与えたことをもちろん評価して申しあげているわけです。