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私はマックス・ウェーバーの比較社会学、特にウェーバーの宗教社会学の影響を非常に受けています。ウェーバーはプロテスタントの倫理性が西洋の近代化に非常に重要であったと考えましたが、私はこれと比較できる宗教的傾向が前近代の日本にあったのではないかということを研究しようと思いました。そのために私は博士論文のテーマに徳川時代の宗教を選び、たくさんあった中から特に心学、またその典型として開祖である石田梅岩に焦点を当てることにしたのです。

第二次大戦後の最初の十年間は、アメリカの社会科学は非常に楽天的な見方に支配されていました。しかし社会科学は急速に科学的になり、常に社会に有益な結果をもたらすという当時の人々の信念を想像することは今では難しくなっています。すなわち、私たちは社会科学に関してもっと謙虚になったわけです。さらに、近代化によって生まれる成果は必ずしもプラス面ばかりではないことがわかったのです。

また『徳川時代の宗教』に影響を与えたのは、経済が十分に発達していればすべてがうまくいくという経済発展を第一とする当時の考え方でした。

 

 

 

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