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これは、あらゆるものに応用可能な普遍の真理です。飛躍した言い方をすれば、今しきりに問題視されている政治倫理ということも、政治家と国民の一体感がなければ達成できないわけであります。企業倫理の問題にしても、経営者と社員、企業と顧客の一体感がなければ、成り立たないのであります。倫理や哲学をこのようにとらえていくのが石門心学であるとすれば、石門心学の現代的意義はまだまだ大きいと言わなければなりません。

二百七十年前、心学は倫理の必要性を痛感した多くの日本人の心をとらえました。今日、その再発見・再評価の運動が始まろうとしています。ひたすら「経済大国」への道を突き進み、現在その弊害に苦しんでいる日本にとって、心学は伝統の知恵を甦らせるとともに、新たな価値の創造に貢献できる可能性を秘めていると言えるでしょう。開講二百七十年を機に、新たな学びの輪が大きく拡がっていくことを願っております。

 

 

 

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