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ただし、現代の日本人にとっては、問題の核心にアプローチするためには、宗教とか道徳といった言葉より、倫理とか哲学という言葉のほうが抵抗が少ないと思われます。倫理とは人と人との関係の筋道ということで、人間関係のあり方とルールについて問題にするのが倫理の受け持つ分野です。

この倫理には実践性と哲学性の両面があると考えられます。もともと「倫理学なる学問は存在しない」と言われるように、学問としてよりも、「リーダーシップとは何か」「姑とうまくやっていくには」といった、私どもの実生活に即したものが倫理なのであります。

日常においても、母親になって育児にあたれば否応なしに赤ちゃんに対する哲学が生まれます。その母親なりの哲学がなければ、どんなに立派な育児書があっても、どんなに良質の人工母乳があっても、赤ちゃんは育てられません。周囲の人の経験や意見を取り入れることも大切です。しかし、それを実際の育児に生かすには、母親の哲学が必要なのです。

では、その母親の哲学はどこから出てくるのでしょうか。それは赤ちゃんと母親との一体感からなのであります。分離した姿ではあるけれども、心のうえから見れば母親と赤ちゃんとはまったく一体であります。

 

 

 

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