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高松宮を名誉総裁にお迎えし、初代の会長に法学博士の穂積重遠先生、二代目の会長には住友の総理事の小倉正恒先生をお願いし、昭和二十年代から三十年代に、石門心学による道義昂揚のための教化講演活動を全国的に展開したのであります。しかしその活動も、中心になる先生方が次々と亡くなられたため、昭和四十年前後には一段落を見ざるをえませんでした。石門心学会も、教化団体から学術研究団体へと団体の性質を変えるようになったのであります。

そうした時代の浮き沈みにあまり関係なく、地道な活動を徳川時代から現在に至るまで続けているのが、私ども心学参前舎という、石門心学の講舎と言われるものの一つであります。昔はただ参前舎と申しましたが、大正十年に社団法人となってからは「心学」の二字を頭につけて「心学参前舎」と呼ぶようになりました。手島堵庵の門下の中澤道二が江戸に開いたもので、二百年余りの歴史があります。

石門心学の講舎は、いちばん盛んであった時期には、日本全国でその数二〇〇に達したと言われています。ただし、現在では、残念ながら昔ながらの講舎の建物は、ほとんど見ることができません。埼玉県の杉戸にある恭倹舎や、長野県富士見町の松目にある時中舎が、かすかに徳川時代の面影をとどめる程度であります。

 

 

 

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