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それらの資料に基づいて、第二次大戦以前においては、石門心学の歴史的研究が相当に進んだばかりではなく、徳川期における心学活動のほぼ全容が解明されたのであります。それは昭和十三年に石川謙先生の『石門心学史の研究』という一五〇〇頁に及ぶ研究書となって実を結んでおります。

石川先生の研究によりまして、石門心学が従来考えられていたような単なる通俗倫理ではないということが、わかってまいりました。その奥に深い原理と哲学をもつ、すぐれた実践倫理思想であることが明らかになってきたのであります。

「徳川時代の石門心学は、農・工・商の庶民階級に普及したというだけではなく、当時の知識層である大名・旗本の武家階級をはじめとして有識者の間にも急速に受け入れられていった」「大名各藩の藩校でも、藩士の教育に石門心学を取り入れる藩が出てきた」「石門心学は女性にも門戸を開放したので、江戸城の大奥にまで波及効果をもたらした」といった、それまでの学界の定説を覆すような研究を次々と発表されたのが石川先生のお仕事でありました。

それらの研究の成果をふまえて、第二次大戦後の昭和二十二年に、石川先生は石門心学会という教化団体を結成されました。

 

 

 

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