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だが、「これでいい」と思い込もうとしても何となく疑いが残る。自分の考えだけでは、どうしても不徹底なところがあったのであります。何とかして明確な決着をつけたいと思い、諸方の講席なども回ってみたのですが、これぞと思える精神的指導者、つまり自分の問題とするところに明確な解答を与えてくれるだけの先生にめぐり会うことはできませんでした。

 

小栗了雲との出会い

そうこうするうちに、やがて機縁が熟したと言うのでしょうか、一人の隠遁の学者、小栗了雲にめぐり会うことになるのです。小栗了雲なる人物については『石田先生事蹟』の中などに少し記述があるだけで、石門心学関係以外の資料にはほとんど出てまいりません。かといって架空の人物ではなく、有職故実や国文にも明るく漢学の素養もそなえた隠遁の学者であったことは、少ない資料からも十分に推察できます。小栗了雲については京都大学名誉教授で心学明倫舎舎主でもあった柴田實先生が「小栗了雲伝記考」なる論文を発表されています。短いものですが、それを読めば小栗了雲についてのすべてがわかると言っても過言ではありません。

 

 

 

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