海洋国家にアイデンティティを求めるのであれば、もっと積極的に海とかかわっていく姿勢を持ち、そこから何らかのモチベーションを掴む機会を得ることが必要だと思います。その意味から、江畑さんが、東南アジアやマラッカ海峡など海に出ていこうと言われたこと、あるいは、秋山さんの、海洋法の世界に目を向けようとのお考えには大賛成です。
沖縄サミットも、終わってみればIT革命といったものが議題になって、地理的に見てアジア・太平洋の海洋中心であり、また、かつて海洋博覧会も開かれた沖縄での開催の意義が失われてしまっていました。日本は多くのチャンスを逸しています。もっと、海洋とのかかわりの機会を積極的に見つけていくことが大事です。海には、手付かずで、日本がイニシアティブを発揮できる分野が随分あります。例えば、ガバナンスという言葉ですが、一九六七年に第三次国連海洋法会議開催のための会議が開かれた時に、すでにガバナンスの概念が提言されています。その後、一九九四年に国連海洋法条約が発効するまでの間に「オーシャン・ガバナンス」という言葉が生まれました。しかしこれまで、この発想を強力に推進するイニシアティブがなく、経過してきています。「オーシャン・ガバナンス」は、日本がリーダーシップを発揮できる分野です。