もちろん言語の問題もあるのですが、例えば、憲法の問題では「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない」と言いながら保持している。すなわち、建前と原則は相反するものがいっぱいあるのです。憲法九条だけではないのですが、二枚舌の国民は信頼できないと見られてしまうのです。
日本人らしさについて、確かにすべての場合にこうなのだということは言えないのではないかという悩みはあると思うのですが、日和見主義という傾向は非常に強いと思います。規則の国ではなくてケース・バイ・ケースの国なのです。原則のない国なのですから、法律は一応の建前なのです。法の国ではなくて感情の国なのです。人の根性、人の人情が法律よりも非常に強い国なのです。それは日本人の魅力であり、アイデンティティとして非常にはっきりしていますが、説明するのがなかなか難しいのです。説明がもっとうまくできればいいと思います。
山田寛 ジェームソンさんの言われたAMF構想の話ですが、エズラ・ヴォーゲル氏(ハーバード大学教授)も、イニシアティブをとることは、非常に辛いこと、痛みのあること、苦しいことだが、日本はまだそれに耐えられるメンタリティーではない、つまり、アメリカに反対されたらやめてしまうというのは、それを乗り越えてアメリカを説得していこうという気概がないのである、という趣旨のことを盛んに一言っています。ですから、江畑さんが、アメリカと渡り合うということを言われましたが、本当に渡り合えるのだろうかと非常に強く感じます。