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日本人の場合はどうか。日本語は音声数が少ないから、いくらしゃべっても口に快感なんかは来ない。したがって議論はあまりしないから、全くの討論下手なのです。反対意見同士の討論は、まったく相手を認めない。相手を認めるどころではない。相手の顔を見るのも嫌となる。その結果、「無視する」「キレる」の現象が起こる。日本語は世界で一番言語音声数が少ない言語なので、したがって日本人は、口の先だけで楽にしゃべれる母語を持っているのです。

口が楽をした分、その余裕で目の神経に余力を振り向けた。しゃべる時も、食べる時も、色々な行動においても、視力をきめ細かく使うようになっていった。日本人はしゃべりながら目でまわりに気を遣い、頷き合い、同意を求めながらしゃべる。世界で一番“相づち”が多い言語が日本語です。そこから“和”というものが生まれてきたのだと思います。日本の古い文化習慣の教育から、そのような日本人の行動が発生したのではありません。

欧米の「口の習慣」を日本の「目の習慣」に置き換えて真似たのが、精密機器の大量生産となって、現在の経済大国の成功に結びついたと言えばわかりやすいでしょう。

問題は、戦後に、日本人がまったく持たない欧米言語の基本音声カルチャーのままで導入してしまった自由主義です。

 

 

 

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