もう一点は、知的財産のマネージメントについてです。無自覚な日本が今、国際舞台で大きく水をあけられつつあるのがこの分野でありまして、超近代化に向かい、今後最もパワーを発揮するのは軍事でも富でもなく「知財」であり、そうなればもともとの日本のポテンシャルはとても高いにもかかわらず、現在国を挙げての知的財産権国家戦略が描けず、日々米国などの先進国にボトルネックを押さえられつつあることが問題です。
伊藤憲一(司会) 私も、確かに「無自覚である日本」という点は重要なのではないかと思ってお話を伺っていたのですが、無自覚といえば、何が無自覚かというと、「実は日本こそアメリカ、西ヨーロッパとともに近代文明の極限状況にいる国である。したがって、近代文明のいろいろな破綻であるとか矛盾であるとかを一番肌身に感じているのは、ヨーロッパであり、アメリカであるとともに、日本なのである」ということに無自覚なのだと思うのです。そういう目で見ると、今、日本国内でもいろいろな閉塞状況の中で、改革しなければいけない、改革しなければならないと言っているのですが、これをアメリカから押しつけられたグローバリゼーションというような形で受けとめるのではなくて、自分自身の発想で独自の解決策を打ち出していくということができれば、日本はほんとうに今度こそ「超近代」という段階において世界のトップを走るランナーになれるのではないか、と思うのです。