その場合、国家のありようを考えて、世界史的に何か大きな貢献をしていこうとすると、どうしてもアジアでは大陸軸に中国があるのです。これは軍事的に対決するとか、中国と覇を争うということではなくて、構想の競争ではないにしても、中国とは違う面から構想を提示していくことになるのではないかなと思います。最近中国は南沙(スプラトリー)諸島に非常に非常に興味を持っているのは間違いないのですが、中国が海洋国家だとはとても思えないのです。
そのように考えますと、中国との関係で「アジア海洋国家日本の構想」というイメージを持ってもいいのではないか。これは、最終的に太田さんが言われたように中国も取り込んで、例えばASEAN+3ということに何ら対立する構想でもなく、非常に興味ある話なのです。しかし、もしアジアで国家構想を考える場合、あるいは世界について何かものを考える場合、日本と中国は違う発想だと思うのです。そこを意識する必要があるのではないかと思います。
もう一点、太田さんのお話の中で、軍事力、富の力から知的な影響力への転化あるいは発展というご指摘がありましたが、人間の社会、人間のつくる世界において国というものを考える場合に、軍事力とか富を無視して議論することは不可能なのではないでしょうか。もちろん知で勝負というのはいいのですが、軍事力あるいは富をいかにマネージするかというのも大変大きな課題だと思います。