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櫻田淳 日本の「近代」のイメージというのは、「海」と大分、重なり合うところがあります。一例としては、司馬遼太郎の小説『竜馬がゆく』であるとか『坂の上の雲』です。とにかく何かをやれば実績が出るのだという信念が、国民の中に共有されていた時代だということが言えると思います。

ですから、この「海洋国家.日本の構想」を考える前に、「海洋国家・日本の精神(スピリット)」の何たるかは、きちんと確認しておいたほうがよい。二〇〇〇年一月号の『中央公論』に東京大学の北岡伸一先生が、日本の価値は何かといったときに、「進取」と「開国」だとお書きになったことがある。私は、北岡先生の議論に賛成します。今の日本の国内状況を考えると、私は、この「進取」と「開国」の価値をきちんと確認することは、諸々の議論の出発点ではないかと考えています。

ところで、現在の国内情勢において、この「進取性」と「開放性」の価値が重んじられているかといえば、かなり疑わしいところがある。教育の場というのは、その典型的な空間みたいなところがあって、今や、何のための教育かが分からなくなっているところがあります。「進取性」の価値が大事だということであるならば、現在のあまりに画一的な教育のありようは、やはり奇異なわけです。

 

 

 

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