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他方、二十世紀を通じて近代化は、特に欧米、日本などの先進的な地域でもう極限まで来ていて、それは中世が抱えていたいろいろな問題を解決し、克服するという話ではなく、環境問題の悪化であるとか、核兵器による人類絶滅の危険性だとか、あるいは行き過ぎた個人主義による家族や社会の崩壊という、マイナスの側面を露呈し始めているわけです。そのときにこれを超えて―それが「超近代」なわけですけれども―「超近代」の文明をどのように築いていくかという、その段階における「近代化」と、先ほどの「近代化」とでは、同じ「近代化」でも意味が違ってくると思うのです。この段階に入ると近代と同じ発想をしていては問題の解決策が思いつかないわけです。

近代とまったく違った発想をしようと思えば、近代とまったく反対の発想をしていた中世を参考にしてみようということになるのです。近代人というのは、昨日よりも今日が、今日よりも明日が良くなるという進歩を追い求めて、すべての価値判断の基準を「進歩か保守か」という次元に還元して、判断しようとします。他方、中世に生きていた人たちは、昨日のように今日があり、今日のように明日がある、年々歳々すべて変わることがない、これが当たり前の世界に生きていたわけで、そういう世界における価値判断の基準というのは「正統か異端か」なのです。

 

 

 

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