地域レベルでは、一九九九年度の問題提起のときに、五百旗頭真氏(神戸大学教授)が「東アジアは二十一世紀に伝統的な中華帝国という図式を越える歴史の新しい局面を模索することとなる。その際、大陸―(私はこれは東アジアと読みかえたほうがいいと思うが)―の中小国の存在を自らの国益と考え、東アジア全体が某一国の排他的支配下に入ることを嫌って、開かれた多元的国際システムを築こうとする海洋国家日本の存在は、地域の多くの国、多くの人々にとってよき知らせなのである」ということを言われた。
日本がイニシアティブをとって、海洋同盟としての日米同盟を基軸に据えつつ、中国をエンゲージし、ASEANの強靭性を強化するかたちで、東アジアに開かれた多元的協力体制を樹立することができれば、海洋国家にふさわしい歴史的使命を果たすこととなろう。