ブレジンスキーの『世界はこう動く』(日本経済新聞社、一九九八年)の中に二つの図がある。一つは、中国が地域大国になった場合に影響圏はどうなるかという図であり、いま一つは、日米が中国の封じ込めを意図的な外交政策としてやった場合に、中国の影響範囲がどうなるかを示したものである。二つの図を比べてみると、差は台湾と、ASEANであり、ASEANがいかに中国の将来の姿勢との関係で重要な地域かということである。
日本は、ASEANが中国のいわゆる朝貢地域、勢力圏に入ってしまわないために、一方で中国を取り込み、他方でASEANの強靱性、日本との結びつきを強化するという両面作戦が必要なわけであるが、ここで提言されている構想は、この両方をねらうものであって、反中国的日米同盟をとらずに、その効果を実現しようというものである。
四. 海洋国家という視点から見た日本の構想
最後に、日本は何をなすべきかを、海洋国家という視点からもう一度見直してみたい。先ほど海洋国家というのは必ずしも海洋にとらわれることなく、普遍的な価値を掲げて世界のために貢献することが日本の国益、つまり、日本の平和と繁栄につながるという、開かれた国益を追求する開かれたメンタリティーを意味すると解釈すべきであると述べたが、世界秩序レベルで南北問題の解決、超近代文明の形成への寄与、貢献をするというのは、まさにそういうことである。