冷戦後、他の先進国のODAへの関心が低下しているだけに、日本の果たすべき役割は大きい。国民的な目標として、日本を国づくりの先達と思っている多くの南の国々の開発を支援することが、日本の使命ではないだろうか。それはまた、日本が世界秩序の安定に貢献する道でもあるのである。
(二) 超近代文明形成への貢献
次に、世界的な秩序のレベルで日本が何をなすべきかについては、超近代文明形成への貢献ということが考えられる。「超近代」という表現は、伊藤憲一氏(日本国際フォーラム理事長)が著書『超近代の衝撃』(東洋経済新報社、一九九五年)の中で「近代を超える文明」の意味で使っているが、今や近代文明は行き詰まっている。核兵器の開発や、環境の破壊、資源の浪費がもたらされている。近代文明のシステムでは、民族と国家の壁が越えられない。論理的思考とか専門分化の壁も越えられない。したがって、人類がこれから生きていくためには、近代を超える文明への移行が必須ではないか。世界は今やそういう段階に差しかかりつつあるのではないか。そういう見方が次第に有力になってきている。
超近代文明という新しい文明の特色として指摘されるのは、異端や多様性に寛容な諸文明の共生であり、このような共生を通じ真の意味での世界文明の誕生が期待されている。