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グローバリゼーションでは、本来は世界の市場が一つになるはずであるが、南北問題の観点から見るとむしろ貧富の差が広がっている。グローバリゼーションで世界が分断されつつあるということが言えるのではないか。地域紛争、原理主義の台頭、テロの横行といった現象のすべてが貧困が唯一の原因ではないにせよ、グローバリゼーションの結果の貧富の差の拡大でこれらの問題が深刻化し、安定的な世界秩序の構築が脅かされていることは指摘できるであろう。

前述の通り、近代化は南の国々のアスピレーションである。イランのように一時近代化に背を向けてイスラム原理主義を大義とした国ですら、再び近代化への道に戻っている。そしてこういう非西欧の国々は、西欧化でない近代化を望んでいるのである。日本のアイデンティティの「非欧米で最初にかつ自力で近代化した日本」というのは、日本がこういう南の国々のアスピレーションにこたえるのに一番最適な位置にあることを意味している。

「海洋国家」をめぐるこれまでの議論の中で、北岡伸一氏(東京大学教授)が、「南北間の貧富の差を平和的に解決するためには南の自力による発展が不可欠である、日本は先進国の圧力の中で自力で発展してきた貴重なモデルである」という発言をされていることが想起される。

ブレジンスキーは、日本は地域大国になるのではなくて、世界が直面するグローバルな問題に取り組む「国際大国」になるべきであると述べているが、世界が直面するグローバルの問題の一つは、まさに南北問題である。

 

 

 

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