(一) 南北間題解決への寄与
世界秩序レベルでまず日本がなすべきは、南北問題解決への寄与である。いまさら南北問題かという向きがあるかも知れないが、あらためてこの問題を取り上げるのは、実は二十一世紀を迎えるに当たって、南北問題をめぐる状況が非常に大きな変化に直面しているからである。まず第一に冷戦が終結したことがある。冷戦中西側のすべての政府開発援助(ODA)が冷戦の戦略から行われてきたわけではなく、特に日本のODAは戦略援助という色彩がかなり薄かった。しかし冷戦がODAにとって非常な重要な要素であったことは疑いのないところであり、事実、冷戦終了後、世界の年間のODAの額が、それまで五百億ドル台だったのが、四百億ドル台と約二割減少した。冷戦の終結だけが減った原因ではないにせよ、一つの大きな原因であることは間違いない。
南北問題をめぐる状況の第二の大きな変化は、グローバリゼーションの進行であろう。もちろんこれまでも開発に成功した国と取り残された国の差はあったわけであるが、グローバリゼーションはこのような格差の拡大に拍車をかけている感じがある。いわゆるマージナライズされた、あるいはされつつある国が増えている。グローバリゼーションのインパクトは非常に大きいもので、アジア危機の際は開発の優等生と言われたタイ、インドネシア、韓国が、金融面のグローバリゼーションに軒並み足をすくわれたのであった。