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第四章 海洋国家日本の構想―世界秩序と地域秩序

 

[問題提起] 太田博

 

一. 日本のアイデンティティ

 

ここでは、本年度(二〇〇〇年度)のテーマ「海洋国家日本の構想:世界秩序と地域秩序」の締めくくりとしてのみならず、三期三年にわたって当セミナーの全体テーマ「海洋国家日本:その文明と戦略」の下に行われた議論を総括する意味も兼ねて、海洋国家日本として何をすべきかについて考えてみたい。

日本が何をなすべきかに入る前に、もう一度アイデンティティの話に戻ると、日本のアイデンティティについて、それが和であるとか、自然の重視であるとか、平等社会であるとか、勤勉であるとか、言ってみれば文化・文明論的な議論、あるいは日本人論的な議論が多く行われた。ただ、このプロジェクトの趣旨から言えば、アイデンティティは国際政治あるいは世界史の展開という視点から考えるべきである。

 

(一) 北東アジアに位置する四面環海の海洋国家

このような視点に立つと、まず日本のアイデンティティの第一として言えるのが、「北東アジアに位置する四面環海の海洋国家」ということである。

 

 

 

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