そういうシナリオで考えると、アメリカのクレディビリティーがなくなるというシナリオですから、とった場合に、東南アジア全部がフィンランド化で中国の言うことを聞くようになったら、たとえ日米の海軍力がいくら強くて日本やアメリカの軍艦が出たって、守れるものではない。東南アジアが全部中国になびいて、華僑も中国になびいて、中国が海南島や西沙や、もっと南のほうまで海軍航空隊を持ったら、空母機動隊をいつも二個置くわけにはいきませんから、それは守れないです。
つまり、アメリカが台湾から手を引かざるを得ないような形で引いた場合は、これはアジアでアメリカのクレディビリティーがなくなりますから、アメリカにかわって中国だという雰囲気になるわけです。そのときに国際情勢が大きく動く。しかし、それはアメリカが許さないだろう。そこでまた衝突の可能性があるというふうに私は考えます。
TMDは、秋山さんが確かに理論的にきれいに整理されたのですけれども、そういうふうにきれいに整理されると、日本はSDIにも反対だということになってくるのです。日本はずっとSDIを支持してきましたけれども、今となって、TMDを守る議論として、NMDは反対だけれども、TMDは賛成だという論の立て方をするのは説得力はあるかもしれませんけれども、そうすると、従来の日本の戦略的理論と背反してくるのです。日本は、そんなにMADを信用しているわけではありません。MADよりも、宇宙防衛ができたらできたほうがいいというのが中曾根さん以来の筋です。だから、その一貫性はちょっと乱れてきます。