江畑謙介 簡単に言いますと、NMDはアメリカ本土防衛用で、冷戦時代からの相互確証破壊理論に直結する問題です。それに対してTMDは、タクティカル・シアター用で、海外における米軍とその同盟国を守るのが目的です。ところが、日本の立場から見るならば、まさにナショナル・ミサイル・ディフェンスですね。ただし、日本のBMDは核抑止理論との関係が非常にあいまいであって、日本に対する弾道ミサイルの攻撃があった場合、自動的にアメリカの核機能が働くのかという前提が何ら議論されていません。例えば、大量破壊兵器のほかの部分である生物・化学兵器弾頭を日本に撃ち込まれたら、どうするかという議論はできていません。アメリカは生物・化学兵器の攻撃に対しては核兵器を使う反撃もあり得るということを湾岸戦争当時から言っておりますが、それはアメリカとその軍に対してはそうかもしれないけれども、アメリカの同盟国に対してもそうするのかというのは明確になっていません。そうすると、われわれにとってはBMDの保持を云々する場合、その部分がアメリカのナショナル・ミサイル・ディフェンスとは違うという点を考えねばならない。