私が念頭に置いているのは、かつてのオーストリアの中立政策です。オーストリアはソ連から攻められないために、例えば国際原子力機関(IAEA)とか、国連工業開発機関(UNIDO)といった国連機関を招致したわけです。そういうことを少しずつ積み重ねることによって、全体としてソ連がオーストリアに手が出しにくくなるという効果を、オーストリァの中立政策はねらっていたのではないかと思います。だから、世界的に見て、例えば中国が世界貿易機関(WTO)に入り、経済的な相互依存関係が非常に増えてきた場合、今までと違って、中国が台湾に手を出したときのマイナスの反応、そういう意味での中国にとってのコストというのは、経済的な相互依存関係が高まれば高まるほど高くなるのではないかと思います。
それだけ一つを取れば、そのぐらいは犠牲にしても、中国は、いざとなれば台湾を取ろうとするかもしれないけれども、そういうものがいくつか積み上がると、意外な抑止効果が出るかもしれないということです。例えばインドですね。ロシアはどうか。ということで、これからの中国と国際社会とのかかわり、あるいは国際社会の中国に対する対応の仕方によって、中国が台湾に武力を行使することのコストが、いくつもが積み重なって高くなり、抑止効果が出てくると考えられないかどうかというのが第二点です。