戦域ミサイル防衛構想(TMD)をめぐっては、北朝鮮の問題もあるが、主たる問題は中国である。また、沖縄の基地問題についても、基地の必要性を考えた場合、中国問題を正面から取り組まない限りは説明できなくなってくるだろう。
次に、台湾海峡の問題を考えると、この問題に関し、米国の政策は現状維持政策である。しかし、クリントン政権は譲歩を繰り返して、「三つのノー」までいった。この「三つのノー」に行き着いた過程を考えると、まず九六年の台湾海峡危機以来、米国の中国専門家が非常に危機感を持ち、米中関係の悪化を恐れ、何か手を打たなければいけないと考えた。そして、九八年のクリントン大統領訪中の際に、「九六年の台湾海峡危機の際には航空母艦を派遣したが、もし台湾が独立を宣言し、台湾側から挑発した場合には、米国は台湾を守らない」という旨を大統領に発言させようとした。
この点については、一九九八年三月八日付けの『ワシントン・ポスト』にジョセフ・ナイ氏が論文を書いた。そこで私は、『ジャパンタイムズ』に「もし台湾が独立を宣言し、中国が武力を行使した場合、米国の議会と世論が台湾を守れと言ったらどうするのか。中国は米国が『台湾を守らない』と言ったから攻めたので、そこで戦争になるだろう。朝鮮戦争の際にも米国が『朝鮮は守らない』と言っていたから北朝鮮が攻めたのである。どうして、そのような危ないことをするのだ」との趣旨で反論を書いた。