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第三章 北東アジア地域秩序の展望と日本の構想

 

[問題提起] 岡崎久彦

 

一. はじめに

 

二〇〇〇年前半において、北東アジアの安全保障の将来にとって大きな意味のある出来事が二つ起こった。一つは朝鮮半島において南北首脳会談が開催されたことであり、もう一つは台湾における総統選挙で陳水扁氏が選出されたことである。こうした中で、北東アジアの安全保障、とくに海上交通の安全保障を考える場合、ほとんど唯一最大の問題は台湾問題に限られてきたといっても過言ではない。ここではまず、朝鮮半島をめぐる情勢を概括した上で、最大の問題である台湾問題に関し、台湾の戦略的重要性について考えてみたい。

 

ニ. 朝鮮半島問題

 

朝鮮半島については、安全保障におけるその重要性は、次第に減りつつあるように思われる。二〇〇〇年六月に金大中大統領と金正日総書記との間で南北首脳会談が開催されたが、その意義は南北統一の方向が決まったことではない。逆に、無期限に平和共存が決まったこと、はっきり言えば南北分断のままでいくことが決まったことにあると言ってよい。

 

 

 

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