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江畑さんは、前回も百年は海が物流の中心になるとおっしゃっていましたけれども、私自身は百年どころではなくて、人類の中に経済活動というのがある限り、海運というのは輸送の主力を占めると思っているわけで、伝統的な海の役割というのは、あるいは海に関する技術、知識というのは常に忘れてはいけないということです。

もう一点申し上げたいのですが、今後の二十一世紀の海洋国家をめざすに当たって、指導者の見識という話がありましたが、他方もう一方で、一般国民の海に対する理解なり親しみが、だんだん薄れてきているような懸念があります。特定のマリンスポーツは、スポーツとして日本でも発展してきていますけれども、一般国民の海そのものに対する関心、あるいは親しみをもうちょっと高まらせるようなことも重要ではないかと思います。マリンスポーツ自体の人口は増えるかもしれないけれども、それはスポーツに対する興味であって、必ずしも海に対する興味がだんだん増えてきているのではない気がします。

 

秋元一峰 長い間、海洋は、「音信不通になる世界」でした。つい最近まで、具体的には、船舶用のモールス電信やレーダーといった技術が普及するまで、船の「もやい」が解かれることは、陸上との絆が切られることを意味しました。コロンブスもヴァスコ・ダ・ガマも、彼らが何処で何をしているのか、本国では全くわからない状態にありました。高校時代に読んだ詩に、「どんなに離れていても、勇気と知恵があれば、海が、あなたと私を結びつける」との一節がありました。

 

 

 

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