遠藤浩一 ITというのは所詮手段、IT革命というのはその手段が発展する過程の一コマにすぎない。ところがわれわれはつい、ITなりIT革命というものを眼前にそびえる巨大な壁のごとく、あるいは目的のごとく錯覚して議論してしまいます。ITなりIT革命という壁の前でうろたえ、浮き足立つという光景は、滑稽であり、悲惨です。先ほどこの業界では三十歳以下の人に開発を任せて、三十以上は御用済みだというお話がありましたけれども、いささか意地悪く言うならば、三十以下の人というのは人生の経験も浅くて、大事と小事、目的と手段の区別がつかない世代です。自分が今携わっている仕事が社会にどういう影響を及ぼすかを顧慮することもないから、乱暴なことが平気でできる、とも言えます。もっとも、そういう若いエネルギーを大人がしたたかに利用するのは決して悪いことではありません。問題は若い世代が無分別に先鋭化させたツールを前にして、分別ある筈の大人が右往左往する有様です。むしろ若い世代はそれを道具にすぎないと割り切っているかもしれないのに、大人がそれを前にたじろぎ、あるいは浮かれているところに滑稽と悲惨があると言わなければなりません。