われわれはネット・ジェネレーションではないわけです。せいぜいテレビ・ジェネレーションとか、私なんかはプリント・ジェネレーションで、すべて印刷物がないとだめな人種です。だから、わざわざソフトコピーやネットワークの電子メモリーに入っているものを出力して見ないと落ち着かないわけです。これはおっしゃるようにジェネレーション・ギャップだと思うのです。
それは第一母国語と同じで、初めに覚えたことがなかなか変更できないのです。チョムスキーという有名な『シンタクティック・ストラクチャー』の著者がいます。彼はマサチューセッツ工科大学(MIT)の言語学の教授ですが、一九五七年に名著を書きました。例えば人間は、日本語の文法はこうだというコツといったパラメーターさえ揃えば全部できるというものを持って生まれてくるのだというのが彼の説でした。ところが、物的証拠がなかなかなかったのですが、一昨年ぐらいにオックスフォード大学の遺伝学者のグループが、俗称「しゃべる遺伝子」、「スピーチワン」というDNAが第七染色体にあって、これがまさにチョムスキーの普遍文法に当たるものだということを見つけだしたのです。ですから、非常に説得的になりました。
例えばiモードを子供に渡したら、使いこなすまでに一時間しかかかりません。インターネットヘ一時間後に入ってくるのです。信じられないでしょう。これを見て、言葉と同じではないかと、一緒に観察していた小児科の医師が感じたそうです。