もう一つの感想としては、日本では硬直化というか、フレキシビリティが欠ける面が確かにありました。その一つの原因として考えられるのが、人口がなまじ多いため、黙っていてもまず一億三千万の市場がある。日本の自動車産業が栄えたというのはそれがあって、ともかく国内で売れ、それで技術発展ができたという事実です。逆に言うならば、なまじ国内市場が大きいため、それに安住してしまって、世界へ出ていく意欲が失われてしまう場合もあるのではないかという気がしております。それが単に物をつくることだけではなくて、もっと広い意味でも起こるかもしれません。
例えば、日本の場合は、いまだに海上自衛隊は日清戦争の時代から鎮守府制度です。大湊とか、横須賀とか、その周辺地域をまず担当して、次に全体を担当する連合艦隊を編成していました。この方式は何がどこで起こるかわからない今の時代には、部隊が多く必要となるため適切ではなく、むしろ情報システムを活用した一元集中的な高速機動運用でパッと対応できるのではないかという気がしています。確かに海軍をはじめとして、軍隊には経験的につくられてきた非常に実践的な伝統があるというのはわかるのですが、それに安住してしまって、新たな方向性を見出そうとする努力に欠ける場合があります。