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石井威望 確かに、日本の指導者は一般的に見てなかなか物事を聞き入れないのです。不勉強かというとそうでもなく、知っている可能性があるのです。けれども、周りのいろいろの絡みとか、変えるときのタイミングとかあるのです。例えば、オイルショックのとき、堺屋太一さんの『油断』をはじめ、警告は盛んに言われていたわけですが、指導者がなかなか動かなかったのです。ところが、ほんとうにオイルショックが来たときにどうなったかというと、「自分が言ったとおりに来た」なんて言い出したのです。まさに君子豹変です。現によく勉強していますから、一旦言い出すと、よく知っています。だから、じっとしたたかな徳川家康のように老獪な感じがします。

 

伊藤憲一(司会) 冷戦が終わってソ連が解体したとき、日本では「これはだれも知らなかった。だれも予言しなかった」ということにしてしまったのですが、実はアメリカのソ連研究者、ブレジンスキーとか、ビアラーとかのグループの間では、八○年代の初めから、つまりソ連解体の十年くらい前から、はっきりと「今世紀末には共産主義は死滅しているだろう」というような予言があったのです。知っている人は知っていたのですが、日本では「だれも知らなかった」ということに、みんな意見が一致してしまったのです。

 

 

 

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