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国の与件を見ますと、日本と共通点が多いと思います。島国であり、自給自足が不可能であり、貿易立国であり、また平和国家でもあります。アィデンティティについても、英国でもなければ中国でもない。あそこの国民の六割ぐらいは中国系なのですが、リー・クアンユーが「自分たちは華僑ではない。華喬、華人の末裔である」と言っているのです。したがって、全く新しいアイデンティティを模索しつつあるということなのです。今のシンガポールを見ますと、独立以来三十五年経ちますが、かつては中継ぎ貿易が主要な産業だったのが、高付加価値の製造業、ハイテクのサービス産業が中心になっています。それからまた、アジアの一つの金融市場になっており、航空・海運のハブでもあります。

それから、地域の秩序、世界の秩序に相当な貢献をしています。例えば、東南アジア諸国連合(ASEAN)やASEAN地域フォーラム(ARF)に大変重要な貢献をしています。また、アジア太平洋経済協力会議(APEC)、世界貿易機関(WTO)でも積極的な活躍をしています。信じられないのは、アジア欧州会議(ASEM)というのがあり、これは何年か前にシンガポールのゴー・チョクトン首相がヨーロッパに行って、フランスのバラデュール首相と話して実現したものなのです。こういうリーダーシップはわれわれが見習うべきではないかと思うわけです。

 

 

 

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