日本財団 図書館


四. 技術文明における海と陸

 

技術文明の海洋史観を考えるとき、ともすれば海と陸を分け過ぎているという点が気にかかる。地中海のヘゲモニーの場合も、源氏と平家もそうで、フラクタル的連携というか、二者択一的に分けられないと私は考えている。

例えば、港を考えると、鉄道をまず新橋汐留から横浜の港に引いたように、鉄道を港、貿易のために使うというのが本来の機能であった。荷物は石炭もあるし、明治開国期日本の場合は当時の花形貿易商品であった生糸であった。ちなみに、鉄道唱歌を見ても「今は山中、今は浜…トンネルの闇を通って」とあり、これは全部赤字路線の風景で、人がいないところを長々と走っている。それは、桑畑が信州や北関東の山中にあったので、鉄道を引いてそれを運んでいたからである。そのうち主力は紡績となり、海外の綿を買って鉄道で港から内陸部へ運び、紡績工場で加工し、また港へ運んで輸出するようになった。

また、陸軍は鉄道による兵員輸送や兵站を考えたが、艦砲射撃から守るために、最初は日本列島の真ん中である中央本線を引いた。その後東海道本線へ移ったが、それは日清戦争で勝利し、艦砲射撃は大丈夫だと思ったからである。結果として、これは非常によかったかもしれない。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION