日本財団 図書館


昭和三十二(一九五七)年にスプートニクが飛んだころ、私自身は通産省で工作機械担当官であったので、当時の工作機械がいかに競争力が弱かったかをよく知っている。それが輸出ができるようになったのが一九七五年で、そこで初めて輸出入バランスが黒字になったのである。

その後、メカトロニクス革命が起き、これが決定的になった。一九九〇年代ではこれだけ対日評価が低下したと言いながら、工作機械の輸出をご覧になればわかるが、生産額でも質量とも世界トップである。二番目が格段の差でドイッで、三番目がまた格段の差でアメリカというようなバランスになっている。昭和三十二年の工作機械担当官としては信じられないような話で、あのころは生産額も低かったし、大体いい工作機械は全部輸入していたのである。

自動車産業においては、技術的には一九七〇年代に完全に世界のトップ水準を射程距離内に捉え、自動車産業が工作機械の大きな市場になり、機械工業のべースができることになった。量的、メカ的にはそこでうんとレベルが上がったが、メカだけでは欧米を抜くまでにはいかなかった。それは、何百年も前からマイスターがいるようなヨーロッパにはとても太刀打ちできなかったからである。ところが、彼らはメカトロニクスで遅れたので、彼我の立場がひっくり返った。今、生産機械は圧倒的に日本が強い。アジア諸国も生産量や価格競争力では強いが、生産設備になると全然違う。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION