とすると、今後の中国とアメリカの力関係も海軍力で決まるということになるでしょう。だからといって、私は日本人の海上自衛隊をむやみに増強すべきだ、などと言うつもりはありません。けれど、もう少し、日本人が海というものに目を向けなければ、今後の発展は望めないと思います。地球上で、海は陸地の三倍を占めています。それだけ広い舞台なのですから。
この場合、最初にお話ししたカルタゴが参考になるでしょう。彼らは陸地にあれだけ拠点をつくりながら、内陸を自分の領土にしようなどというつもりは、さらさらありませんでした。自分の国は小さくていい、ただ商品の荷揚げをする中継基地があればいい、というわけで、ブリタニアも、シチリア島も領有しようという気はなかった。
そう言えば、アメリカも強大な海軍力を持ちながら、本国が広いというせいもあるのでしょうが、あまり陸地に関心を示しておりません。第二次大戦後に日本を占領しても、日本をアメリカの五十一州目にしようなどと考えなかった。本質的に「海彦」であるアメリカは、あまり陸地にはこだわらないのじゃないかという気がします。ということになりますと、これからは海を舞台にした、いわゆる世界共同体という構想も生まれてくる。平和的な、海を中心としたネットワークの形成ということです。
その意味でも、海の再考察が必要です。多角的に海の利用というものを考えていかねばならない。例えば、海上新幹線などというようなものも建設される可能性があると思います。というのは、物資や商品を大量に運ぶことができるのは海以外にないからです。いかに航空機が発達しても、大量の物資や資源を空路で運ぶわけにはいかない。大量輸送となれば、やはり海に頼るしかないのですね。
さらに、今後のエネルギー事情ということになると、メタンハイドレート、海底油田などの海の資源の問題があります。未開発の資源は海にある。私は「山彦」から「海彦」へ転換することが二十一世紀の日本の大きな課題だと思います。