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伊藤憲一(司会) 一言だけ最後に感想をつけ加えさせていただきますと、海上覇権国というのは必ず陸上覇権国と対決し、やがて衝突するようになる。過去の例で言うと、カルタゴはローマと対決せざるを得なかったし、ヴェネチアもまずオスマントルコと、それからナポレオンのフランスと対決せざるを得ず、最後はそれによって滅ぼされるわけです。またスペインにしても、あるいはオランダにしても、結局はフランスの陸上覇権によって最終的にとどめを刺されるわけです。またイギリスは、第一次大戦、第二次大戦を通じて結局、大陸国家であるドイツとの対決を強いられたし、アメリカも冷戦期においてソ連との対決を経験したわけです。これらの対決はいずれも海上覇権国と陸上覇権国の運命的な対決であったように思われるわけです。

そういう歴史を振り返ってみたときに、なぜカルタゴ、ヴェニス、そのほかの海上覇権国は結局、ローマ、トルコあるいはフランスに屈したのに対して、イギリス、アメリカはドイツ、ロシアとの戦いに勝ったのか、この違いを考えてみることが重要になると思うのです。

 

 

 

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